身近な歴史をリアルに ~アルバムのカラー化 呉海兵団編 その4 教育① の続編となります。
旧漢字及び仮名遣いは、それを知らない方にも解るように改めています。
アルバム(昭和二年度志願兵 四等機関兵修業記念 呉海兵団)
砲術(中隊教練)
徒手、各個、分隊、小隊教練と階段をふんで
いよいよ中隊教練だ、
「目標軍法会議の入口」!! 勇往邁進!! 炎天下の中隊教練! 照りつける太陽熱! 蒸し上がる地熱!
しかし何と勇ましい堂々たるものだろう、
正気堂々歩々整々と邁進する所は本当に軍隊だ、
この様な魂、軍人を持った日本こそ永久に変わりなき歴史を持つのである、
いわゆる基本教練、気を付けなどの姿勢や敬礼、行進の仕方を意味しています。
徒手とは銃を持たない状態、各個は個人での動作を指します。
海軍の生活単位と異なり、教練の部隊単位については陸軍と同様に分隊<小隊<中隊となっているようです。
砲術(散開教練)
第一分隊その場に散開!!
基準兵の位置、松の木の所、その場に散れ!
長官官舎の所の敵兵ー五百ー打ち方始め!
「オイオイお前はそれで横距離が四歩あるか!
五百だ五百だ お前の照尺は四百じゃないか!
着剣は交互にせ、皆一所にするから弾が一つも出ん」
と教班長、イヤ、分隊下士官の仰せも
酷暑の熱気で頭が「ボー」として遠雷の如くに聞いている、
長官官舎とは呉鎮守府司令長官官舎を指し、写真の左側で、現在は入船山記念館になっています。
照尺とは小銃の照準を行う装置ですが、それで目標までの距離を設定するようになっています。
着剣とは小銃に銃剣を装着する事を指しますが、恐らく着剣を全員が一斉にすると、その間に
小銃を射撃する兵がいなくなってしまう、と言う意味ではないかと思われます。
砲術(射撃)
いくら照準して撃っても標的は回らない、こいつは小銃が悪いんだろうてな感がする
「どこを撃つんだい」また土手だ 今度は上だよ 照準が良かったらよく落ち着いて呼吸を止めて
とにかく射撃は引金の引き方一つだ!! 彼方でも此方でも教班長の怒鳴る注意の声が聞こえる
今度こそはと充分なる姿勢も取った、照準も満星だ いつとなく「ドーン」アリア仕舞った、
監的壕では標的が回る、青白の旗が左右に往復する
実に気持ちが良い、ハハア此処だな「心で引くな手で引くな 秋の木の葉の散る如く」
右上の写真が監的壕で、一番右の兵が手にしているのが標的になります。
この標的を壕から上に掲げ、それを目標に射撃をする事になります。
下写真の最前線(上側)が射座(射手が射撃を行う位置)で、新兵の射手2名に下士官のコーチ役が1名となっていて、その後ろに観測係、射場管理役や指揮官、更にその後ろが待機線となっているようです。
先日発生した、岐阜の陸上自衛隊の小銃乱射事件について、日野基本射撃場は屋内、こちらは屋外の射撃場となりますが、基本的な配置は同様と思われます。
ちなみに、本来射座で装着すべき弾倉を待機線で装着し、乱射したようですが、自衛隊の射撃訓練に限らず、アメリカなどの民間射撃場などでも、急に悪意を持って銃を乱射し始めた人がいる場合、即座に押し留めるのは難しいのではと感じます。
演習所感
前へ前へ前へ
白露を踏みしだき踏みしだき前進する我らも
進めば敵も進む銃声益々繁く剣光閃き悽愴の
気天地に充つ、やー今に突撃だぶ何をつつ
この身も砕けよと、ぶつかってくれん、統監旗は
厳然として秋風に翻る実戦そのままのその光景
これまでの訓練の軍服が白の2種軍装(夏服)だったのが、濃紺の1種軍装(冬服)になっているので、やはり訓練の総仕上げ、指揮官が演習を視察している場面なのでしょう。
身近な歴史をリアルに ~アルバムのカラー化 呉海兵団編 その6 教育③に続きます。